- 日本の製造業は『微』と『美』という他の国の製造業には真似できない圧倒的な強みを有している。
- 生産競争から価値競争へと移行するとどうしてもマーケティングが必要となる。
- 日本の製造業はその強みを存分に活かすためマーケティングを克服しなければならない。
こんにちは、マーケティングデザイナーの藤郷かつらです。
前回は、本稿のターゲットについて述べた。
今回は、日本の製造業の現状、というテーマについて述べたい。
詳しくは後述することになるが、本稿における「商品」という言葉は製品とサービスという2つをあわせた概念である。
本題に入る前に、様々な業界があるなかで、なぜ私が日本の製造業を取り上げているのかを説明しておこう。
インターネットが普及するまでは売り手と買い手がもつ情報には大きな格差があった。それがインターネットの登場により企業と消費者間の情報の偏在が解消された。
売り手と買い手に情報の格差が少なくなると、サービスの差別化は難しくなる。新しいサービスを立ち上げ、一度は差別化ができたとしても、情報はすぐに共有され、競合に真似され、追いつかれる。
追いつかれないようにするためには、常に新しいサービスを生み出し続け、今までにない価値を提供し続けなければならない。
このようなサービスの業界では、米国企業のようにスピードを強みとしている企業が活躍できる。
現にGAFAと呼ばれるGoogle・Amazon・Facebook(現Meta社)・Appleというような米国の巨大企業のうち、Appleを除いた3社はサービスプロバイダーとして成功を収めている。
スピードを強みとはしていない日本の企業にとって、このようなサービス業界は決して最適市場とはいえない。
一方で製品をつくる製造業はどうだろうか。もちろんスピードも重要なひとつの要素ではあるが、それよりも製品の特徴・性能・品質がものをいう。
これも別の項で後述することになるが、誰しも強みでしか価値を提供することはできない。私が日本をマーケティングするならば、強みをもつ製造業をやはりその中心に据える。
しかも日本の製造業は他の国の製造業には真似できない、圧倒的な強みを有している。それは『微』と『美』である。
これらが日本の製造業ならではの大きな価値を生み出している。これら『微』と『美』という強みを最大限に活かすことで世の中をより良くすることができる。
もちろん、これだけではなんのことだかさっぱり、という感じだろう。『微』と『美』については日本・日本人・日本企業の強みという章で後程詳細に説明を加える。
では本題に戻ろう。
我々日本人は、日本や日本の製品が生み出す価値を伝えることの必要性、その重要性を理解していない。そのため、価値を知ってもらおうという努力が欠けているし、その活動も限られている、もしくは正しくできていない。
モノが行き渡らない時代には大量にモノをつくることが最優先事項だった。日本の製造業は得意の生産技術を武器に均質性の高い製品を大量につくり届けることで、世界中に日本・日本製品のファンを増やしていった。
生産競争の時代はこれでも良かったのだろう。日本国内で日本企業対日本企業という構図で競争をしているあいだはそれでも良かったのかもしれない。
ところが、世の中にモノが溢れ出し多くの人の手元に届くようになると、人々は価値でモノを取捨選択するようになる。価値を感じるものにだけお金を出すようになる。
代わりはいくらでもあるため、価値を感じなければ買わないという選択肢も出てくる。
このような価値競争の時代に移行すると、製造業としてはこれまでのように均質性の高い製品を大量につくっているだけでは立ち行かなくなる。
複数の選択肢があればより安いものを人々は選ぶようになる。そうなれば安い人件費を背景とした価格競争力をもつ国やその国の企業が主役として表舞台に躍り出てくる。
白物家電でいえば韓国や台湾、その後中国が台頭したのはご存知のとおりだ。
価値競争では顧客に価値を伝えること、もっと正確には顧客に価値が伝わるようにすること、顧客に価値を正しく理解してもらうことが重要な要素となる。
日本の製品に価値がないといっているのではない。むしろ逆に、日本の製品には高い価値がある。
それにもかかわらず、伝えきれていない、伝わっていないことが勿体ないと言いたいのだ。
顧客にとって実は非常に高い価値があったとしても、その価値が伝わっていなければ、顧客に買ってもらう機会を逸するという結果になるわけだ。
生産競争から価値競争へと移行すると、マーケティングがどうしても必要になる。
顧客が価値を感じる製品を生み出し、その製品の価値を顧客に正しく伝えられているかを考え、実行に移すのがマーケティングのプロセスである。
マーケティングの定義は次章以降で詳しく述べていくことになる。
マーケティング戦略のひとつに販売促進戦略というものがある。この販促戦略について述べるなかで、プル(Pull)戦略・プッシュ(Push)戦略という分類が登場する。
どちらも読んで字の如くである。プル戦略とは、顧客から企業に対して積極的に買いたいといってもらえるよう引き込む戦略のこと。
一方のプッシュ戦略は、企業が顧客に積極的に働きかける押しの戦略である。
日本の製造業は諸外国と比較すれば、典型的なプル戦略を展開してきた。自分たちは良いものをつくっている、それを選ぶのは顧客というのが日本の製造業のこれまでのやり方だった。
日本の製品はモノがいいから自分たちから売り込むことなんてしなくてよい、と考えている人もいるだろう。
外国の企業がプッシュ戦略で様々なCMを打ったり、広告を出したりしているのを見ても、製品が悪いから宣伝しないと売れないのだ、と横から眺めている人もいるだろう。
思うに、顧客として日本人は日本製品の良し悪しという目利きができるという点で世界一である。
日本人が顧客であれば、良いモノをつくりさえすれば大きな声で宣伝しなくても、顧客が自分たちで目利きをして買ってくれるのかもしれない。
だからこそ、日本企業が日本人相手に製品を売っている限りにおいては、自分たちから売り込むことはしない、という姿勢でもやっていけるのかもしれない。
ところが、海外への展開となるとここは大きく異なる。日本を訪れたこともない、日本人と話をしたこともない外国人が、日本製品の価値を正しく理解することがあるだろうか。
確かに、日本を訪れる外国人が日本の製品を喜んで買っては、本国に持ち帰る。
しかし、これをもって外国人が日本製品の価値を正しく理解できていると言えるだろうか。
日本を何度か訪れたことがあって、たまたま日本人の知り合いがいたら日本製品の価値を正しく理解しているだろうか。きっと私たちが期待するほどに正しい理解の仕方をしている外国人は、ほぼ皆無だろう。
顧客としての日本人は世界の中では特殊な存在であると肝に銘じておいてほしい。日本人の求める価値、日本人特有の美的センスなどは世界的に見てもかなり特殊なものであることをよく理解しておこう。
日本人の顧客であれば放っておいてもあなたの製品を正しく理解するかもしれない。
しかし、外国人の顧客がなんの説明もなしにあなたの製品を正しく理解することなどあり得ないと考えておこう。
自分たちから海外の顧客へ向けて売り込む必要なんてない、という企業の多くは、これまで良い製品をつくって提供し、そのようにしていて製品が売れていたのだろう。
日本向けにつくった製品がたまたま海外で外国人にも受け入れられていて、海外売上がちょっとした足しになっているから、これで十分と考えているのかもしれない。
ことによっては日本企業たるもの、外国人に対して派手に宣伝したり買ってくださいと言ったりするのは恥だとまで考えている企業もあるだろう。
繰り返しになるが、価値競争の時代においてはこれでは外国企業に勝てない。
世界中でSNSなどにより情報が瞬時に拡散し、製品が普遍化しているなか、自社・自社製品の魅力を伝えることができなければ、外国で世界の企業に伍して戦うことはできない。
実は日本の製品のほうが良いのに、外国の顧客に知られていないがために残念な結果になっているなどという例はごまんとある。
日本企業の製品と似たような製品をつくっている外国企業が、グローバルで見れば先行者利益を得、世界の顧客に受け入れられているという例はいくらでもある。
それを遠くから眺めながら、ただ羨ましいとか忌々しいと感じるだけで終わるのか。それとも自分のところの製品のほうが顧客にとって価値があるのだから、なんとしてでも価値を届けたいと思うか、あなたはどちらだろう。
本稿を読みマーケティングの知識を得ることで、顧客が価値を感じてくれる製品をつくろう、その製品のもつ価値を正しく理解してもらおう。このようにあなたに思っていただくために私は本稿を執筆している。
日本の製造業は世界の企業が羨むような強みをいくつももっている。その一方で、それを存分に活かすためにどうしても克服しなければならないことがいくつか存在している。
もちろんそのひとつがマーケティングであることは言うまでもない。
今回は、日本の製造業の現状、というテーマについて述べた。
次回は、日本の製造業にいま必要なこと、というテーマについて述べたい。
- 日本の製造業は『微』と『美』という他の国の製造業には真似できない圧倒的な強みを有している。
- 生産競争から価値競争へと移行するとどうしてもマーケティングが必要となる。
- 日本の製造業はその強みを存分に活かすためマーケティングを克服しなければならない。


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